ICカードリーダの打刻データをクラウドに素早く連携!
特定非営利活動法人Woods(ウッズ)
2025.10.03

概要
フリースクールに通うお子様たちの入退室管理と、保護者へのリアルタイム通知を目的としたプロジェクト。kintone*の「チーム応援ライセンス」と、東京都フリースクール等支援事業の補助金を活用することを前提に、ICカードリーダ「ピットタッチ・プロ3*」とAmazon Web Services(以下、AWS)
を組み合わせて構築。他社ベンダーとの連携、ランニングコストの抑制といった課題をクリアしながら、フリースクール様のご要望に合わせた入退室管理システムを実現した。
構成

お客様情報
特定非営利活動法人Woods(ウッズ)

お話を伺った方:代表理事 金木様
特定非営利活動法人Woods(ウッズ)は、不登校や発達障害のある子どもたちを対象に、日中の学習支援を行う施設。年齢や国籍、障害の有無を問わず、誰もが安心して過ごせる「第3の居場所」を目指している。学校でも家庭でもない場所だからこそ、子どもや保護者の小さな声に寄り添い、一人ひとりに合った支援を届けることを大切にしながら、活動を続けている。
導入前の課題と効果
課題1
利用者の入退室を紙の表で管理。無事に着いたかどうか心配されている保護者からの問い合わせも個別に返信していた。
解決方法
各生徒の交通系ICカードをカードリーダで読み取り、他社システムと連携して保護者へ自動通知する仕組みを設計。
導入効果
入退室管理に関わる業務負担を軽減。入退室に関する問い合わせ対応はほぼゼロになった。
課題2
毎月最終週は、活動報告書の作成に時間を費やしていた。入退室の集計はExcelで作成し、時間がかかっていた。
解決方法
入退室時の打刻情報をデータとして取得。
導入効果
活動報告書のうち、入退室の集計作業の負担を軽減。
課題3
フリースクールという業種、NPO法人という業態ならではの予算の制約があり、特にランニングコストはかけられない状況だった。
解決方法
非営利法人向けのプランを提供する他社ベンダーと協働し、本当に必要な機能だけを組み合わせた設計を提案。
導入効果
初期費用には補助金を活用。ランニングコストは現状、AWS*の無料枠でほぼまかなえている。
インタビュー
―導入に至った背景をお聞きしたいです。フリースクールに登下校する子どもたちの入退室管理と、それを保護者の方々に通知で共有したいというのが大きな目的としてありました。当校は一人ひとり登下校の日時が決まっているのですが、子どもたちの入退室の管理がすごく大変で。従来はアナログで管理してきましたが、利用者の人数的にも限界を迎えていました。
以前から管理ツールとして、kintone*を利用しており、入退室データと自動連携して便利にならないものか…と検討していた際に、中央システムさんに辿り着きました。
―従来はどのような方法で管理されていたのでしょうか?以前は、「何月何日はどの子が来る」という表をExcelで作り、紙で管理していました。低学年の子や電車で通われている子の場合、保護者さんが心配されて「着きましたか?」と直接ご連絡くださることも多く、以前は一つひとつ返信していました。
―アナログでの入退室管理と、保護者の方々とのコミュニケーションが課題だったのですね。
導入後の効果

―現在はどのような形で入退室を管理されていますか?
登下校の際、子どもたちが自分でICカードリーダにピッとかざすだけです。カードを新たに配布するというよりは、子どもたちがもともと持っている交通系ICカードで登録ができるシステムです。
―ピッとかざすと、自動的に保護者の方々へ入退室の情報が通知され、紙での管理も個別の返信も不要になったということですね。スタッフの皆様の体感として、時間や労力はどれくらい効率化できたでしょうか。
数値化するのはなかなか難しいですが、体感的には半分ぐらいの労力になったかなという感じです。
―保護者の方々への自動通知という部分はkintone*側のシステムではありますが、入退室情報が自動的に通知されるようになったことで、登下校に関する保護者対応にかけていた時間は0になったと言っても差し支えないレベルで効率化できたのではないでしょうか。そうですね。あとは、毎月末に作成している活動報告書の集計もかなり楽になったので、大喜びしています。うちは学校さんと併用している子どもも多く、学習の進度などの細やかな共有を大事にしています。活動報告書はフォーマットが決まっていて、もう一人の役員が月末の最終週はずっとそれを書いているような感じでした。以前はExcelで集計していた、「何時に来て何時に帰ったか」という情報を簡単にまとめられるようになっただけでも、かなり楽になりました。
―活動報告書のうち、お子様たちの入退室の集計にかかる時間が大幅に削減できたということですね。保護者の方々の反応はいかがでしょうか?6月半ばに導入したばかりなんですが、保護者の皆様へは来校またはオンラインで運用説明会を行いました。アーカイブでご覧になった方もいますが、まだの方もいて、今後はマニュアルも整備したいと考えています。
―保護者の方々への運用定着としてはいかがでしょうか。保護者の皆様も、すぐに使えるようになった方や「こうしたほうが良いのでは」とご意見をくださる方もいる一方で、スマホの使い方やログイン方法からご説明が必要な方もいて、理解度の差は大きかったです。フリースクールの特性上、例えば学校に行けるようになったとかで利用者の入れ替わりも多く、利用者登録やご説明はその都度行う必要もあります。
AWS*のスペシャリストが寄り添いニーズに合わせて提案
―システム導入前には、どのような心配や懸念がありましたか?システムを入れることによって個人情報流出のリスクはないのだろうかという不安はありました。我々はこういったシステムの専門家ではありませんし、どのようなリスクがあるのか想像ができなかったのもあります。最初は、契約書について弁護士の先生に相談するなど、かなり時間をかけました。
あと、AWS*というシステム自体が難しくて、料金形態なども含めてなかなか理解しきれていない部分もありました。中央システムさんがいろいろと検証してくださって、料金形態、特に無料枠についてのお話も聞けて安心できました。当校のボランティアさんのなかにたまたまIT関係の方がいて、相談したら「AWSなら絶対安心だし大丈夫ですよ」と言ってくださったのも心強かったです。
―AWS*のサービスは高いセキュリティを誇るとはいえ、第三者の意見があればなお安心ですよね。そうですね。導入後は基本的に自分たちで管理していくものなので、アドバイザーがいないとドキドキしちゃうだろうなとは思います。今後も、緊急事態のときはスポットでご相談させていただくつもりです。
―システム導入段階では、不安やわかりにくいところなどはありませんでしたか?担当の中央システムさんが作ってくださった資料は、素人でもわかるような説明だったので、まったく困難はなかったですね。スクールまで来て、横に座って画面を見せながら、一つずつわかりやすく説明してくださいました。Wi-Fiの環境や機器を置く場所なども含めて、実際に現地に来てもらって相談したいなと最初から思っていたので、ありがたかったですね。
―今回、中央システムを選んでいただいたきっかけは何かありますか?入退室管理のシステム自体はいろんな会社さんから出ていますが、例えば、学習塾向けのシステムだとさまざまな便利な機能が付随している分、どうしてもランニングコストがかかってしまうんですよね。今回、我々のなかでは「kintone*を利用する」ということだけが最初に決まっており、そこと連携できるシステムが必要でした。中央システムさんは、そんな我々の狭いニーズに応えてくださったのが大きかったです。入退室管理のためのシステムではないことは承知の上でご連絡したのに、「これを活用して、こういうシステムを作ろうと思っているんです」と言ったら、「それなら『ピットタッチ*』だけでできるかもしれない、こういう工夫の仕方ができますよ」とご提案をいただけました。
―今回はパッケージ製品ではなく、ご自身のニーズに合わせて構築したことで、最終的に非常に便利なシステムが実現できたということですね。そうですね。かなり複雑な要望を出していたのですが、柔軟に合わせていただけたのでとても助かりました。最初のご提案の時点で、「こういうベンダーさんに頼もうと思っていて、こういうことをやりたい。だからここだけを担ってほしい」みたいなことをお話ししたら、「では、ここからここまでをこうしてもらえれば、我々はここが担えます」という資料をしっかり作ってくださいました。我々が口頭で伝えたふわふわした条件を、視覚的にもわかりやすくまとめていただいて、とても助かりました。
―他社ベンダーも含めた構築のスムーズさや、ニッチな要望に応えられる対応力、そしてITの専門知識がない方へのご説明のわかりやすさなどをご評価いただけているのですね。
補助金の活用について
―今回、システムの導入にあたって活用された補助金についてお聞きしたいです。活用したのは、「東京都フリースクール等支援事業」です。「施設・活動の安全性向上にかかる経費」のうち、施設の安全性向上に資する目的で物品購入などにも使える「安全体制整備費」を活用しました。
―この補助金を知ったきっかけは何でしたか?フリースクール等協議会に参加していたこともあり、東京都からメールでお知らせいただきました。当時、利用者の方々に対する助成金が始まった直後ぐらいだったと思います。補助金の交付要綱には、活動実績が1年以上とか、都内在住の子どもを預かっているかなど細かい規定がいろいろとあります。今回活用した「安全体制整備費」は、もともと施設の改装や設備費の補助を想定していたようで、我々が入退室管理システムで申請した際は「ちょっと待ってください」と言われたりもしました。結果的には、入退室管理も安全管理のひとつだということで、無事承認されました。
―フリースクール業界では、こういった入退室管理はアナログで管理されているところが多いのでしょうか。すごく多いです。そこにかけられるお金が本当に、ほとんどないので。今回活用した補助金も、補助率は2分の1なので半額は自己負担です。
―補助金なので要件次第では必ずしも承認されるわけではないし、補助率を考えると、ある程度資金的に余裕がないと難しいかもしれませんね。そうですね。申請自体も苦労する部分も少なからずありました。
―補助率や補助金申請の大変さも踏まえたうえでお聞きしますが、費用対効果という点では、今回システムを導入されて良かったですか?費用対効果としては、導入して良かったです。
―ちなみに、毎月のランニングコストとしてはいかがですか?実は、無料枠が終わった後に備えて「techsoup(テックスープ)」*にも申し込んであるのですが、AWS*の無料枠がなかなか終わらなくて。AWS*標準の無料枠の範囲でまかなえる仕組みにしていただけたのは想定外でした。
―ランニングコストを低く抑えられるという点で、今回活用された補助金との相性も良かったということですね。

入退室管理システムをご検討中の方へのメッセージ
―最後に、同じフリースクール支援事業で入退室管理などでお悩みの方へ向けメッセージをお願いします。今回は、子どもたちの安全と保護者の方の安心につながるものにしたいと思って導入し、かなえることができました。人力だけではどうにもできない部分なので、我々の導入事例が、同じような課題に悩む方たちのお役に立てたらうれしいです。
―AWS総合支援サービスを活用することで困っていた入退室管理をシステム化できたという事ですね。金木様インタビューにご協力いただきありがとうございました。
*AWSはAmazon Web Servicesの略称
*kintoneはサイボウズ株式会社提供のノーコードツール
*ピットタッチ・プロ3は株式会社スマート・ソリューション・テクノロジー
社の非接触ICカードリーダー
*techsoup(テックスープ)は 非営利法人がIT製品やサービスを低価格で利用できるよう支援するプログラム